スコッチウイスキーと一口に言っても、その種類や産地は多岐にわたります。
その中でも「ハイランドモルトウイスキー」は、スコットランド最大の生産地域・ハイランド地方で造られるシングルモルトの総称で、風味の幅広さと深いコクが魅力です。
この記事では、ハイランドウイスキーの基本情報から地域的特徴、おすすめの銘柄までを網羅的にご紹介します。
ウイスキー初心者の方も、愛好家の方も、自分に合った1本を見つける参考にしてください。

スコッチウイスキー ハイランドの魅力とおすすめ

ハイランドモルトは、スコットランドの北部にハイランド地方で造られるシングルモルトです。
この地域では蒸溜所ごとに異なる個性が育まれており、華やかでフルーティなタイプからスモーキーで重厚な味わいまで、バラエティに富んだ風味を楽しめるのが大きな魅力。
バランスの良い味わいや飲みやすさを兼ね備えた銘柄が多く、入門者から上級者向けまで対応できる懐の深さを持っているのも特徴です。
スコッチウイスキー ハイランドとは

ハイランドの地理と歴史

ハイランド地方の特徴
ハイランド地方は、スコットランド北部を中心に広がる雄大なエリアであり、山岳地帯や渓谷、湖など自然豊かな風景が広がっています。
気候は冷涼かつ湿潤で、ウイスキーの熟成に適した環境です。
この地域は、かつてケルト系民族であるゲール族が支配していた歴史を持ち、スコットランドの文化的起源とも深く結びついています。
また、キルトやタータンチェック、バグパイプといったスコットランドを象徴する伝統文化の多くもハイランド地方が起源。
その風土と誇りは今もウイスキー造りに反映されています。
地理的には非常に広く、現在スペイサイドやアイランズと分類される地域も、もともとはハイランドの一部として扱われていました。
このため、ハイランドウイスキーには非常に多様な風味とスタイルが存在し、各蒸溜所ごとに個性豊かなモルトが造られています。
ピート(泥炭)を使ったスモーキーなタイプから、軽快で華やかなアロマを持つものまで、豊かなバリエーションが楽しめるのが魅力です。
ハイランドウイスキーの歴史

18世紀から19世紀にかけて、ハイランド地方は密造酒の一大拠点として知られていました。
山岳地帯や人里離れた地形は取り締まりを逃れるのに適しており、当時のモルトウイスキー業者はこの環境を活かして独自の製法を守り続けてきました。
これにより、ローランド地方のような大量生産型のグレーンウイスキー業者ではなく、風味にこだわるモルト業者が中心となったのです。
その後、19世紀に入り税法の整備が進み、蒸溜所が正式に登録されるようになりました。
現在でもハイランドには、歴史ある蒸溜所が多数現存しており、伝統を受け継ぎながらも革新的なアプローチを取り入れたウイスキー造りが続けられています。
ハイランド地方の蒸溜所は、個々の風味や製法に強いこだわりを持つ小規模なところが多いです。
それが多様で豊かな味わいに繋がっています。
ハイランドウイスキーの特徴

ハイランドモルトの風味と香り
ハイランドモルトは、全体としては辛口でピート香が穏やかなものが主流ですが、広大な地域ゆえに、多種多様な銘柄が存在します。
そこで、ハイランドモルトの特徴の傾向を、東西南北に分けて簡単に紹介しましょう。
- 【東ハイランド】
-
東ハイランドは、比較的平野部が広がり、フルーティーな香りと口に含んだときのフレッシュさが特徴のモルトが多く見られます。
- ドライフルーツのような豊潤さ
- ナッツのようなふくよかさ
- ミディアム~ヘビーなボディの銘柄が多い
- 【西ハイランド】
-
西ハイランドには、ベン・ネビス山のような山岳地帯や港町があり、レーズンやサクランボのような香りのモルトや、磯の香りを持つ銘柄が代表的です。
ややキャンベルタウンモルトに近い印象がある銘柄もあります。
- フレッシュなフルーティさと豊潤なドライフルーツの印象
- 磯の香りを感じるソルティさ
- ほのかにスモーキーでバランスがいい
- ライト~ミディアムボディの銘柄が多い
- 【南ハイランド】
-
南ハイランドはローランド地方と隣接し、口当たりが軽く飲みやすいウイスキーが多く、初心者にも人気の地域です。
- モルティさやナッティさを感じる銘柄が多い
- 口当たりが軽く飲みやすい
- 芳醇さとライトさのバランスが程よい
- 【北ハイランド】
-
インヴァネス以北に広がるこの地域では、バランスの取れたキレのある銘柄やヘビーなピート感を持つウイスキー、ソルティな印象のウイスキーも見られます。
- ソルティでキレのある銘柄が多い
- フルーティかつ芳醇でバランスがいい
- ハイランドモルトの中で人気の高い銘柄が多い
このように、ハイランドモルトには特出して「これが特徴」と言えるものはありません。
地域や蒸溜所ごとに異なる個性を楽しめるのが大きな魅力です。
他の地域との違い
スペイサイドがフルーティで甘みの強いスタイル、アイラが強烈なピート香を特徴とするのに対し、ハイランドはその中間的なポジションにあり、どのような嗜好にもフィットしやすい点が魅力です。
また、蒸溜所の数も多く、選択肢が豊富なのも特徴。
知名度の高い銘柄だけでなく、個性的で味わい深いウイスキーも数多く存在し、骨格がしっかりとした“スコッチらしさ”を持ったスタイルが多いのもハイランドモルトの特長といえるでしょう。
地域ごと、蒸溜所ごとに個性が異なるため、まるでスコットランドを旅するような感覚で飲み比べを楽しむことができるのも、他地域にはない魅力の一つです。
おすすめのハイランドウイスキー
以下に、初心者から上級者まで楽しめる、おすすめのハイランドモルトウイスキーをご紹介します。風味や価格帯のバランスを考慮し、多様なタイプをピックアップしました。
グレンモーレンジィ オリジナル
ジャンル | シングルモルト |
---|---|
生産国 | スコットランド・ハイランド |
アルコール度数 | 40% |
樽 | バーボン樽中心 |
熟成年数 | 10年 |
「完璧すぎるウイスキー」といわれるグレンモーレンジィのフラグシップボトル「オリジナル」。
材木からこだわったデザイナーズカスクで10年以上熟成された原酒のみ使用しボトリングされています。
オレンジやアプリコットのような爽やかな果実香にバニラや蜂蜜の甘いフレーバー、複雑で奥深い余韻が特徴。
本場スコットランドでは1番愛飲されているシングルモルトウイスキーです。

ダルウィニー 15年

オーバン 14年

アバフェルディ 12年
ジャンル | シングルモルト |
---|---|
生産国 | スコットランド・ハイランド |
アルコール度数 | 40% |
樽 | ‐ |
熟成年数 | 12年 |
デュワーズの原酒確保のために建てられ中核となるキーモルトを作っているアバフェルディ蒸留所。
そのフラグシップボトルが「アバフェルディ12年」です。
熟した赤リンゴやナッツ、シナモン、はちみつのような香りとコクのある余韻が特徴。
甘く芳醇な味わいで、ストレートからハイボールまで幅広く楽しめる一本となっています。

アードモア レガシー
ジャンル | シングルモルト |
---|---|
生産国 | スコットランド・ハイランド |
アルコール度数 | 40% |
樽 | 1stフィルのバーボン樽がメイン |
熟成年数 | ‐ |
ティーチャーズ ハイランドクリームのモルトウイスキー原酒を安定供給するために作られたアードモア蒸留所。
そのシングルモルトのオフィシャル定番ボトルが「アードモア レガシー」です。
焚火のようなスモーキーな香りとシトラスに軽快な口当たりが特徴。
ハイボールにするとクセのないスモーキーさとスムースな味わいがお楽しみいただけます。

クライヌリッシュ 14年
ジャンル | シングルモルト |
---|---|
生産国 | スコットランド・ハイランド |
アルコール度数 | 46% |
樽 | ‐ |
熟成年数 | 14年 |
クライヌリッシュ蒸留所からオフィシャルリリースされている唯一のボトルが「クライヌリッシュ14年」です。
山猫の絵が印象的で、過去にはUD社の花と動物シリーズからリリースされていました。
華やかなはちみつの香りにフルーティなフレーバーとほのかにソルティさな余韻が特徴。
甘く芳醇な香りとアクセントの潮感があり、ウイスキー通から人気の高い銘柄となっています。

グレンドロナック 12年

ロイヤルブラックラ 12年
ジャンル | シングルモルト |
---|---|
生産国 | スコットランド |
アルコール度数 | 46% |
樽 | シェリー樽フィニッシュ |
熟成年数 | 12年 |
スコッチウイスキーの中ではじめて「ロイヤル」の称号を獲得した蒸留所「ロイヤルブラックラ」のフラグシップボトル。
伝統的なシェリー樽熟成にこだわる蒸留所で、ドライフルーツのような芳醇な香りと桃のようなフレッシュな果実、深く長い余韻が特長です。
12年熟成は主に1stフィルのオロロソシェリー樽を使用しており、シェリー樽由来の色合いと特徴がよく現れたウイスキーとなっています。

トマーティン レガシー

ブレアアソール 12年

オールドプルトニー 12年
ジャンル | シングルモルト |
---|---|
生産国 | スコットランド |
アルコール度数 | 40% |
樽 | バーボン樽メイン |
熟成年数 | 12年 |
「海のモルト」と言われるほど、ソルティなニュアンスが強い銘柄「オールドプルトニー」。
潮風のようなブリニーさにバニラ香、青リンゴのフレッシュな果実、フルボディながらスムースな味わいが特徴です。
かつてはニシンとモルトウイスキーで栄えた街「プルトニー」で造られているモルトウイスキーでラベルにはニシン漁船が描かれています。
また特徴的なひょうたんのようなボトルの形は、プルトニー蒸留所のポットスチルの形状を表現。
ぜひプルトニーのボトルを見ながら遠いスコットランドの海の風をご堪能ください。

ロッホローモンド クラシック

フェッターケアン 12年

ハイランドという名前でもハイランドモルトではないウイスキー

ハイランドという名称がついていても、実際には「ハイランドモルト」ではないウイスキーが存在します。
その代表例が、「ハイランドクリーム ティーチャーズ」と「ハイランドパーク」です。
- ハイランドクリーム ティーチャーズ
-
スコッチウイスキーとして知られる「ティーチャーズ」は、複数のモルトとグレーンウイスキーをブレンドしたブレンデッドスコッチウイスキーです。
キーモルトにはスモーキーな風味が特徴のハイランドモルト「アードモア」が使用されており、ブレンデッドながらハイランドモルトらしい深みのある味わいが楽しめます。
- ハイランドパーク
-
「ハイランド」という名を冠してはいますが、実際にはオークニー諸島に位置する「アイランズ」エリアの蒸溜所です。
蒸溜所は町の南方にある高台に立地しており、北側にはカークウォールの町が広がっています。
この高台はかつて「ハイパーク」や「パークヒル」と呼ばれていたことから、蒸溜所名「ハイランド・パーク」の由来となりました。
北方の島嶼らしい海風を感じる味わいと、程よいピート感が特徴です。
このように、名前に「ハイランド」が含まれていても、必ずしもハイランドモルトとは限らない点に注意が必要です。
ハイランドウイスキーを楽しむコツ

食事とのペアリング
ハイランドウイスキーは料理との相性も抜群です。
たとえば、アードモアのようなスモーキータイプはグリル肉や燻製チーズとよく合い、ダルウィニーのような甘みのあるタイプはチョコレートやフルーツタルトとのペアリングがおすすめです。

ベストな保存方法
開封後のボトルは直射日光を避け、温度変化の少ない場所で保存するのが理想です。
なるべく空気に触れないようにし、専用のボトルストッパーを使うと風味を長く保てます。
よくある質問
まとめ
ハイランドモルトウイスキーは、スコットランドの広大な自然と歴史が育んだ多様な魅力を持つウイスキーです。
初心者から上級者まで楽しめる幅広いラインナップと、料理との相性の良さが特長。
この記事を参考に、ぜひ自分のテーブルにぴったりの1本を見つけてみてください。
コメント
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[…] スペイサイドモルトは、ピートの効いたアイラモルトや多様性のあるハイランドモルトと比べると、明確に“華やかで上品”な印象を持ちます。 […]