ハイボール自体は、200年以上も前から飲まれていた飲み方で、長い歴史があります。
ところが、現代の日本でウイスキーの入り口をここまで広げた存在は間違いなく「ハイボール」。
この記事では、なぜハイボールがここまでヒットしたのか料理人目線で解説していこうと思います。
ハイボールはなぜヒットした?
炭酸水は1790年には工業化されており、ウイスキーのソーダ割りは1800年代には飲まれていたと考えられます。
初めて「ハイボール」が登場したと言われる文献は、1894年。
H. A. Du Souchetの戯曲『My Friend from India』よりバーテンダーに注文していた「ウイスキーのハイボール」がもっとも古いハイボールの文献だと言われています。
日本でも昭和30年代には「ハイボール」が飲まれており、高度経済成長期でのウイスキーブームではよく飲まれていた飲み方でした。
ところが、当時の飲み方は円柱型の背の高いグラスで飲まれることが多く、ハイボール自体も今ほども市民権は得ていなかったそうです。
1980年代以降、ウイスキー市場には冬の時代が到来し、需要が低迷。
ウイスキーメーカーは、撤退か市場開拓の道を模索するしかありませんでした。
その開拓の一つが「ハイボール」です。
当時ウイスキーは「古臭い」「飲みにくい」「飲む機会がない」というイメージがあり、若者からの人気があまりありませんでした。
そのイメージを払拭し、若者のニーズにこたえるために2008年からサントリーがブラッシュアップしたのが「角ハイボール」。
- ハイボール専門のサーバー
- 正統派の角ハイボールの作り方の指南
- 有名女優のCM起用(小雪、菅野美穂など)
- ジョッキで飲むハイボール
- ハイボールのRTD化
さまざまな紆余曲折はあったものの、2009年には「ハイボール」を中心にウイスキーの需要は高まり、ハイボールを提供する飲食店が激増。
ジャパニーズウイスキーの世界的な価値拡大や世界的なクラフトウイスキーブームなどに乗っかり、ハイボールの認知度が高くなっていきました。
現在では、複数の企業が「ハイボール缶」を展開していることや居酒屋での「ハイボール」の常飲化が進んでおり、完全に「ハイボール」が市民権を得たといえるでしょう。
(参照:https://www.diageobaracademy.com/en-zz/home/explore-all-recipes/highball1、https://j-net21.smrj.go.jp/special/populardrinks/2011030201.html、https://www.suntory.co.jp/recruit/media/articles/000009.html)
安井店で飲むハイボールも、家で飲むハイボール美味い。楽しみ方が広がった今は最高ですね!
ストレートやロックと違ったハイボールの魅力
気軽さとシーンを選ばない
今でこそ当たり前となりましたが、「ジョッキで楽しむ」という発想がハイボールに自由を与えたと思います。
ハイボールのハードルが下がり、ハイボールをビールのような感覚で楽しめるようになりました。
結果、ストレートやロックのようにダンディー・古風・大人といったイメージではなく、気軽で爽快なイメージへとなったのでしょう。
サントリーの施策の一つとして成功し、他の企業も続いたことでハイボール文化が広がりました。
だからこそ、さまざまなハイボールスタイルが広まっていったのだと思います。
- 原点回帰の「神戸ハイボール」
- 志村けんさんの遺産「志村ハイボール」
- サントリーの「正統派ハイボール」
味わい的に「気軽さ」があり、ウイスキーの中でストレートやロックでは味わえない「休符」としての楽しみ方こそハイボールの魅力。
今世紀のハイボールとして気軽さや爽快なイメージが定着したことによるシーンの拡大が大きかったと思います。
食中酒に最適
ハイボールの魅力は食中に飲むお酒として最適なことです。
- アルコール度数が低いため、さまざまな料理ジャンルに合いやすい
- 炭酸が油っぽさを流してくれる
- ウイスキーの香りが立ちやすく、ペアリングの楽しみが広がる
唐揚げや揚げ豆腐、すじ煮込みなどの居酒屋メニューから、ピッツァ・パスタ、タコスなどの軽食メニューにも合いやすいです。
特に日本では、お酒だけを楽しむよりもお酒とアテを合わせることのほうが多い傾向があります。
合わせるメニューの汎用性の高さもロックやストレートにはないハイボールの魅力だと思います。

まとめ
ハイボールは、決して新しい飲み方ではありません。
200年以上前から楽しまれてきた歴史のある飲み方であり、日本でも昭和の時代から親しまれてきました。
しかし、現代の日本でハイボールがここまで広がった理由は、単に昔の飲み方が復活したからではないと思います。
ジョッキで気軽に飲めること。
食事に合わせやすいこと。
缶でも楽しめること。
そして、ウイスキーに詳しくない人でも「美味しい」と思える入口になったこと。
ハイボールは、ウイスキーを薄めた飲み方ではなく、ウイスキーを現代の食卓や居酒屋に合わせて翻訳し直した飲み方です。
だからこそ、今世紀のウイスキー最大の発明は「ハイボール」ではなく、ハイボールを日常の酒として再発明したことなのかもしれません。
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