ウイスキーといえばナッツやチョコを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実はチーズも相性抜群のおつまみです。
とくに種類豊富なナチュラルチーズは、ウイスキーの香りや味わいと見事に調和します。
ただし、チーズとウイスキーのペアリングは一筋縄ではいきません。
チーズの風味や脂肪分、熟成度、ウイスキーの飲み方によってもバランスが変わるため、ポイントを押さえることが重要です。
この記事では、ウイスキーとチーズの相性やおすすめの銘柄、保存方法までをわかりやすく紹介します。
初心者にも役立つ内容を丁寧にまとめました。
チーズとは?ヨーグルトとの違いとは?

チーズと一口にいっても、実はその種類は無数に存在します。
クリームチーズのようなフレッシュタイプから、青カビを使った熟成タイプまで、風味や食感は実に多彩です。
CODEX(国際食品規格)の定義によると……
乳や脱脂乳をレンネットやその他凝固剤によって凝固、ホエイを分離したもの。
もっと詳しくいうと
「チーズ=(チーズ中のホエイタンパク質濃度/カゼイン濃度<乳中のホエイタンパク質濃度/カゼイン濃度)」
(出典:チーズの教本 2019 「チーズプロフェッショナル」のための教科書 [ NPO法人チーズプロフェッショナル協会 ])

つまり、乳のタンパク質の比率からも、チーズはヨーグルトとは明確に異なる加工食品ということです。
そしてこの定義に当てはめるとリコッタチーズはチーズではない?ということになります。
リコッタは、ホエイ(乳清)を再加熱して固めたもので、名前の語源も「再び(Ri)煮る(Cotta)」という意味。
ほとんどホエイたんぱく質で作られたリコッタチーズは、厳密にはチーズとは言えないのです。
チーズの2大分類:ナチュラルチーズとプロセスチーズ

チーズは大きく分けて「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」の2つに分類されます。
プロセスチーズ | ナチュラルチーズ |
---|---|
ナチュラルチーズを加熱・再形成したもの | 乳を凝固させたもの |
保存性と均一性に優れている | 熟成により風味が変化 |
癖がなく食べやすい | 個性的 |
20世紀初頭、「加熱殺菌された保存性の高いチーズ」としてプロセスチーズが誕生しました。
これにより、広い地域でチーズが手軽に楽しめるようになり、消費量も一気に増加。
加熱とブレンドによりクセが抑えられ、より多くの人に受け入れられる存在となりました。
ナチュラルチーズの中の種類とその製法
ナチュラルチーズは一括りにされがちですが、実際には製法や熟成期間、使用される乳の種類によって風味や食感は大きく異なります。
基本的な製造工程は共通しているものの、途中から分岐する加工方法がそのチーズの「個性」を決定づけるポイントになります。
ナチュラルチーズの製造工程(3段階)
原料乳の脂肪分を調整し、乳酸菌やレンネットを加えて凝固させます。
牛乳の品質や種類によって、出来上がるチーズの風味も大きく変わってきます。
凝固した乳(凝乳)をカッティングし、ホエイ(乳清)を取り除いたあと、カードを型に詰めて成形。
カードのサイズがチーズの硬さに影響し、ハードタイプは細かく、ソフトタイプは大きくカットされます。
型から取り出した「グリーンチーズ」を塩水で洗浄したり、カビや菌を植え付けたりして熟成。
フレッシュタイプ以外のほとんどのナチュラルチーズはこの工程で個性を深めます。
次章では、ナチュラルチーズを以下の8タイプに分類し、それぞれの特徴と、どのようなタイプのウイスキーと相性が良いかを具体的にご紹介します。
ハードタイプ


- パルミジャーノ・レッジャーノ
- ペコリーノ・ロマーノ
- コンテ
など
水分量が少なく、しっかりとした硬さと濃厚な旨味が特徴です。
水分含有量は38%以下で、熟成期間は6か月から36か月以上。
熟成が進むとアミノ酸が結晶化し、表面にシャリッとした食感が現れることがあり、これが濃厚でリッチな風味を楽しませてくれます。
長期保存ができ、料理にも使いやすいのが利点。
香ばしさのあるウイスキーや、甘くまろやかなバニラ香のある銘柄と合わせると、チーズの旨味が引き立ちます。
スペイサイドの華やかなシングルモルトやアイリッシュウイスキー。
軽やかな甘みとコクがチーズの濃厚さとバランスを取ります。
セミハードタイプ


- チェダー
- ゴーダ
- エダム
- ミモレット
など
ハードタイプより柔らかく、しっとりとした食感とコクのある味わいが魅力のセミハードタイプ。
水分含有量は38〜46%で、保存性に優れ、日本でもよく見かける種類です。
熟成期間は3〜12か月ほどで、穏やかに熟成が進み、長く食べ頃が続きます。
カードを圧搾し塩水に漬けてから熟成させる非加熱圧搾タイプが多く、グラタンやサンドイッチなど幅広い料理にも活用できます。
ゴーダやミモレットなどの代表的なチーズは、コクのあるウイスキーと合わせることで味わいの広がりが楽しめます。
ハイランドモルトやキャンベルタウンモルトなど、コクのあるタイプ。
スモーキーな香りを持つものとも好相性です。
フレッシュタイプ


- カッテージチーズ
- マスカルポーネ
- ブリア=サヴァラン
など
熟成を行わず、乳酸菌や酵素で凝固させて作られるのがフレッシュタイプのチーズです。
すべてのチーズの始まりがフレッシュチーズであり、最も原始的なチーズでもあります。
水分量が多く、軽やかな酸味とさっぱりとした風味が特徴でクセも少なく、食べやすいのが魅力。
カッテージチーズやクリームチーズなどが代表的で、そのままでも加熱しても美味しく楽しめます。
開封後は鮮度が落ちやすいため、できるだけ早く食べ切るのが理想です。
フルーティで軽快なブレンデッドウイスキーやジャパニーズウイスキーのハイボール。
サラダや軽めの前菜と一緒に楽しむのも◎。
パスタフィラータタイプ


- モッツァレラ
- スカモルツァ
- カチョカバロ
など
パスタフィラータタイプは、加熱したカードを練ることで生まれる弾力と、もちっとした独特の食感が魅力のチーズです。
代表的なモッツァレラは、その名の通り「引きちぎる」という意味を持ち、手でちぎって使う食べ方が特徴です。
ほとんどがフレッシュタイプで楽しまれます。
17世紀のナポリ周辺で生まれたこの製法は、もともと保存性を高める目的でもあったと言われています。
イタリアの伝統的なチーズ文化を象徴した製法です。
潮感やスパイシーさのあるアイラ系ウイスキー。
特に燻製風味のあるチーズには、ピートの効いたスモーキーなウイスキーが合います。
青カビタイプ


- ゴルゴンゾーラ
- スティルトン
- ロックフォール
など
青カビタイプチーズは、内部に青カビを繁殖させて熟成させた個性的なチーズで、ピリッとした刺激と塩気、濃厚なコクが魅力です。
ゴルゴンゾーラやロックフォール、スティルトンが有名で、青カビがもたらす独特の風味は他にはない個性を放ちます。
これらのチーズは、甘味や厚みのあるウイスキーとの相性が抜群。
特にシェリー樽熟成のウイスキーは、ドライフルーツやナッツの風味がチーズと見事に調和し、濃密で豊かなマリアージュが楽しめます。
シェリー樽熟成の濃厚で甘みのあるウイスキー。
ドライフルーツやナッツのニュアンスがあるとよりマッチします。
白カビタイプ


- カマンベール・ド・ノルマンディー
- ブリ・ド・モー
など
表面に白カビを生やし、内部はとろけるようなクリーミーさが魅力です。
まろやかなミルクの甘みと、白カビ由来のほのかな苦みやスパイス感が絶妙に調和し、後引く味わいを生み出します。
外皮と中身の風味のギャップも楽しめる、奥深いタイプのチーズです。
スモーキーでややナッツ感のあるウイスキー。
ラフロイグやカリラのようなアイラモルトも好相性。
ウォッシュタイプ


- エポワス
- タレッジョ
など
ウォッシュタイプとは、チーズの表面を塩水や酒で定期的に洗いながら熟成させたものです。
外皮に住みついた菌が活発に働くことで、独特の強い香りと深い旨味が生まれます。
匂いは強烈ですが、中身は驚くほどまろやかでコクのある味わいが特徴です。
熟成期間は3〜8週間が目安で、特に秋冬にかけて風味が深まるとされています。
ナッティな香りや樽感のあるウイスキー。
やや玄人向けですが、意外性のある深いペアリングが楽しめます。
シェーブルタイプ


- クロタン・ド・シャヴィニョル
- ヴァランセ
- ブシェット
など
シェーブルタイプは山羊乳から作られるチーズで、白くてややパサついた見た目と、独特の酸味・ミネラル感が特徴です。
熟成が浅いものはさっぱりとした風味が楽しめ、熟成が進むとピリッとした刺激とコクが増します。
山羊特有の香りと味わいがあるため、好みが分かれますが、クセのあるウイスキーと合わせると意外なハーモニーが生まれます。
特にフランス・ロワール地方の伝統的な製法で作られるシェーブルは、フルーティーで香り高いウイスキーと好相性です。
果実味豊かなスペイサイドモルトや、フローラルで軽やかなジャパニーズウイスキー。
香りの奥行きを楽しみたい上級者向けのペアリングです。
実際に試したい!おすすめチーズとウイスキーの極上ペアリング


ここからは、実際にウイスキーと組み合わせて楽しめる具体的なチーズの種類と、おすすめのウイスキー銘柄を紹介していきます。
ペアリングの理由や味わいの特徴を実用的な内容でご案内します。
パルミジャーノ・レッジャーノ × グレンリベット18年
- チーズの分類
-
ハードタイプ
- 原産国
-
イタリア
「チーズの王様」とも称されるパルミジャーノ・レッジャーノは、熟成による結晶化した旨味と濃厚なコクが魅力。
塩気が強めで風味が豊かなので、しっかりとした味わいのウイスキーと好相性です。


グレンリベット 18年
キャラメルやアプリコット、オレンジピールのような華やかな香りと、ドライフルーツを思わせる豊かな甘みが魅力。しなやかな余韻とともに、チーズの塩気や旨味をまろやかに包み込んでくれます。まさに王道の組み合わせで、優雅なペアリング体験を味わいたい方にぴったりです。
ジャンル | シングルモルト |
---|---|
生産国 | スコットランド・スペイサイド |
アルコール度数 | 40% |
樽 | バーボン樽 シェリー樽 |
熟成年数 | 18年 |
「「エレガンス極まる、特別な日のグレンリベット18年」」
ファースト&セカンドフィルのアメリカンオークとシェリー樽を巧みに使い分けた、ザ・グレンリベット18年。
リッチなトフィー香と甘いオレンジ、スパイスの効いたレーズンの余韻が贅沢に広がります。
熟練の技が生んだ、複雑でエレガントな味わい。
特別なひとときにふさわしい、最高峰のシングルモルトです。


レティヴァ × エドラダワー10年
- チーズの分類
-
ハードタイプ
- 原産国
-
スイス
スイス初のA.O.C認定チーズである「レティヴァ」は、ナッツのような香ばしさと濃厚なミルクの旨味を兼ね備えた逸品。
夏季(5月10日~10月10日)に標高1000~2000mほどの高地で作られたチーズで、レティヴァ村で最低一週間以上熟成させて造られています。
伝統的に銅製の釜を使い、熱源は薪のみ。
エピセア(チーズの熟成によく使われる木材)板の上で熟成させています。
ミルキーで、味わい深く唯一無二の存在感を放ちます。


エドラダワー10年
小規模かつ伝統的な手法で造られるエドラダワーは、シェリー樽由来のドライフルーツやチョコレートのような甘く芳醇なフレーバーが特徴。力強いコクがレティヴァの個性と完璧にマッチし、深い余韻が長く続くペアリング体験をもたらします。濃密でリッチな味わいを楽しみたい方におすすめの組み合わせです。
ジャンル | シングルモルト |
---|---|
生産国 | スコットランド・ハイランド |
アルコール度数 | 40% |
樽 | バーボン樽 シェリー樽 |
熟成年数 | 10年 |
「「古き良き手仕事が香る、可憐なハイランドの一滴」」
スコットランド最小規模の蒸溜所・エドラダワーが手がける「10年」は、バニラや果実の甘い香りと、舌ざわりなめらかなクリーミーさが魅力の少量手づくりハイランドモルト。
バームクーヘンやキャラメルのような香ばしい甘みに、柔らかな後味が続く芳醇な味わい。
女性にもおすすめの、温もりあふれる一本です。


ブラータ × グレンモーレンジィ ネクター・ドール
- チーズの分類
-
フレッシュタイプ(パスタフィラータ)
- 原産国
-
イタリア
近年人気が高まっている「ブラータ」は、モッツァレラの中にクリームが詰め込まれたチーズで、割ると中から濃厚でとろりとしたクリームが溢れ出すビジュアルも魅力的です。
ミルキーでまろやかな味わいに、ほどよい酸味が加わり、フルーティーなウイスキーとの相性が抜群です。
グレンモーレンジィ ザ・ネクター
甘口の白ワイン樽で後熟されたこのウイスキーは、レモンタルトやピーチメルバのような華やかな甘みと、繊細で上品な余韻が特徴。ブラータの濃厚なクリームと爽やかな果実香が調和し、口の中で贅沢なマリアージュを奏でます。


シュロップシャーブルー × グレンドロナック12年
- チーズの分類
-
青かびタイプ
- 原産国
-
スコットランド
スコットランド生まれの「シュロップシャーブルー」は、青カビタイプながらクリーミーでまろやかな口当たりが特徴。
スティルトンよりも穏やかで、カラメルのような甘さやバター感もあり、ブルーチーズが苦手な方でも比較的親しみやすいタイプです。
グレンドロナック12年
シェリー樽100%熟成の芳醇な香りとコクが魅力の一本。ナッツやレーズン、チョコレートのような甘く重厚な味わいが、シュロップシャーブルーの塩気と風味をやさしく受け止め、濃密なマリアージュを実現します。チーズの個性を引き立てつつ、深い余韻が楽しめる組み合わせです。


サン・シモン・ダ・コスタ × バルヴェニー12年 ダブルウッド
- チーズの分類
-
セミハードタイプ
- 原産国
-
スペイン
スペイン北西部ガリシア地方産の「サン・シモン・ダ・コスタ」は、樺の木で燻製されたユニークな香ばしさと、もっちりとした食感が特徴。
ミルクの甘みとほんのりとしたスモーク感のバランスが絶妙で、ウイスキーと合わせるとその魅力が一層引き立ちます。
バルヴェニー12年 ダブルウッド
バーボン樽とシェリー樽の二段熟成による複雑な風味を持つバルヴェニー12年は、柔らかく深みのある味わいが魅力。スモーク感のあるチーズと合わせることで、バニラやレーズン、ナッツのような余韻がより際立ち、甘くスパイシーなペアリングが完成します。


カマンベール・ド・ノルマンディー × グレンリベット14年
- チーズの分類
-
白カビタイプ
- 原産国
-
フランス
白カビチーズの代表格ともいえる「カマンベール・ド・ノルマンディー」は、ミルキーでクリーミーな味わいと、表皮に感じるピリッとした風味が魅力。
一般的なカマンベールよりも味が濃く、繊細ながらも余韻が長く続くのが特徴です。
グレンリベット14年(コニャックカスク・セレクション)
フルーティで華やかな香りに、コニャック樽由来のまろやかな甘みとスパイスが効いた奥行きのある味わいが特徴。チーズのクリーミーさと絶妙なバランスを生み、口の中でリッチで心地よいペアリングが完成します。


ペコリーノ・トスカーノ × グレングラント アルボラリス
- チーズの分類
-
セミハードタイプ(羊乳)
- 原産国
-
イタリア
トスカーナ州で作られる「ペコリーノ・トスカーノ」は、塩気が控えめでまろやかな甘みがある羊乳チーズ。若いうちはしっとりとした食感と優しいコク、熟成が進むと濃厚な旨味が感じられるようになります。
グレングラント アルボラリス
バーボン樽とシェリー樽の原酒をブレンドした華やかでライトなシングルモルト。柑橘系のフレッシュさと繊細な甘みが、ペコリーノの優しい乳の風味と溶け合い、食前にもぴったりな軽やかなペアリングが完成します。


まとめ
チーズとウイスキーのペアリングは、単なる「おつまみ」以上の豊かな体験をもたらしてくれます。
チーズの個性や熟成度、原産国に応じたマッチングを楽しめば、ウイスキーの香りや味わいをより一層深く堪能できるでしょう。
ぜひ今回ご紹介した組み合わせを参考に、ご自身の「最愛のペアリング」を見つけてみてください。
家飲みの時間がもっと特別なひとときになりますように。
よくある質問(FAQ)
出典・参照元
- チーズの教本 「チーズプロフェッショナル」のための教科書
- 雪印メグミルク チーズクラブ
- ウイスキーコニサー資格認定試験教本
コメント