ワインの世界では「料理と酒のマリアージュ」が長年語られてきましたが、近年はウイスキーでも同様の動きが注目を集めています。
特にスコッチウイスキーの多様な香味は、肉料理だけでなく魚介やスパイス料理とも相性がいいです。
今回は、その中でもひときわ華やかな存在「ジョニーウォーカー ブラックルビー」と、濃厚な海老の旨味を閉じ込めた「アメリケーヌクリームパスタ」のペアリングを通じて、“香りの共鳴”を体験してみましょう。
ジョニーウォーカー「ブラックルビー」とは

ジョニーウォーカー ブラックルビーは、同ブランドの中でも特別なエディションとして位置づけられるブレンデッドスコッチです。
特徴は、熟した赤い果実、バニラ、トフィー、そしてわずかなスモーキーさが折り重なった官能的な香り。
ウイスキーとしての骨格を持ちながらも、ワイン的な果実香が感じられるのがポイントです。
一般的なジョニーウォーカー ブラックラベルよりも甘みが豊かで、口当たりはまろやか。
トロピカルフルーツやダークチェリーのようなニュアンスが広がり、ハイボールにしても香りがしっかり立ち上がります。
この「果実味×スモーキー×バニラ香」が、クリーミーで旨味の強い海老ソースと見事に調和しやすいと考えました。
海老のアメリケーヌクリームパスタが持つ“旨味の設計”

アメリケーヌソースは、フランス料理の技法をベースにした甲殻類のソース。
海老の殻をじっくり炒め、香味野菜やトマトペーストを加えて煮詰め、生クリームで仕上げるのが定番です。
その味わいは「濃厚」「芳醇」「コク深い」の三拍子。
まさに旨味の宝庫といえます。
特に香ばしくローストした海老殻から生まれるメイラード香は、ウイスキーの樽熟成で生まれるロースト香と共通する香気成分(ピラジン、フルフラールなど)を含みます。
つまり、科学的にもこの2つの香りは共鳴し合う関係なのです。

- 有頭海老(殻と頭を使う) 4 尾
- 玉ねぎ (みじん切り) 1/2 個
- にんじん (みじん切り) 1/2 個
- にんにく (みじん切り) 1 片
- トマトペースト 1 大さじ
- 白ワイン 100 ml
- 水 200 ml
- 生クリーム 150 ml
- バター 20 g
- オリーブオイル 15 ml
- 塩 適量
- パスタ(リングイネまたはスパゲッティ) 400 g
- パプリカパウダー (仕上げ用) 少々
- 海老の頭と殻を外し、身は冷蔵庫に取っておく。
- フライパンにオリーブオイルを熱し、殻と頭を中火でしっかり炒める。赤く色づき、香ばしい香りが出たら取り出す。
- 同じ鍋でバターを溶かし、玉ねぎ・にんじん・セロリ・にんにくを加えてしんなりするまで炒める。
- トマトペーストを加えてさらに炒め、白ワインを注いでアルコールを飛ばす。
- 水を加え、炒めた海老殻を戻して15分ほど煮出す。ざるで濾してソースを取り出す。
- 鍋にソースを戻し、生クリームを加えて軽く煮詰める。塩で味を整える。
- 別鍋で茹でたパスタを加えて絡める。器に盛り、焼いた海老の身をのせて完成。
- 仕上げにパプリカパウダーを振り、エキストラバージンオリーブオイルを少量垂らすと風味が豊かに。
ペアリング理論|甘味・香ばしさ・余韻の科学
ペアリングの基本は「共通項を探すこと」。
ブラックルビーの甘くスモーキーな香りは、アメリケーヌのバターと海老の香味に寄り添います。
さらに、アルコールの持つ揮発性がソースの油脂をやわらげ、香りをより広げる働きをします。

フレーバーマトリクスで見る味覚の相関
| 要素 | ブラックルビー | アメリケーヌソース |
|---|---|---|
| 甘さ | バニラ・トフィー | 生クリーム・トマトの自然な甘味 |
| 香ばしさ | 樽由来のロースト香 | 海老殻の香ばしさ |
| 旨味 | モルトの厚み | 甲殻類エキスの濃縮旨味 |
| 余韻 | スモーキーで長い | バターと海老の余韻 |
共通項が多いほど、ペアリングは自然に調和します。
特にこの組み合わせは、甘味と香ばしさの“橋渡し”が美しいのです。
アルコール×脂質の相溶効果とは
アルコールは脂溶性成分を溶かし込む性質を持ちます。
つまり、ソース中の海老油やバターの芳香成分が、ウイスキーのアルコールと出会うことでさらに立体的に感じられるのです。
飲むたびに香りがふくらみ、ソースの濃厚さが軽やかに変化します。
実食レポート|ブラックルビー×アメリケーヌの実際の調和

香りの第一印象
一口目の印象は、まるで香りが会話しているよう。
アメリケーヌのバターのまろやかさが、ブラックルビーの熟成香を優しく包み込みます。
グラスを近づけただけで、チェリーと海老の香ばしさが交じり合い、食欲をそそります。
口中での変化と余韻
食べ進めるごとに、ウイスキーの果実香が海老の甘味を引き立て、後半はスモーキーな香りが全体を締めてくれます。
最後に残るのは、クリームとモルトの穏やかな甘み。
この余韻が非常に心地よく、まさに“大人のペアリング”と呼ぶにふさわしい組み合わせです。
他のウイスキーとの比較考察
バーボン系との違い
バーボンはバニラ香が強く、甘味のアタックが早い傾向にあります。
アメリケーヌパスタにも合いますが、少し重たく感じる場合も。
ブラックルビーはスモーキーさと果実味のバランスが取れているため、より立体的で長い余韻が楽しめます。
シェリー樽ウイスキーとの対比
シェリー樽熟成のウイスキー(例:マッカランやグレンファークラス)は、ドライフルーツの甘味が強調されます。
アメリケーヌの酸味や塩味との対比で楽しめますが、全体の印象はやや重厚。
ブラックルビーは華やかさがあり、海老の繊細な甘味を邪魔しません。
まとめ|香りと記憶をつなぐ一皿
ジョニーウォーカー ブラックルビーと海老のアメリケーヌクリームパスタ。
このペアリングは、単なる“酒と料理”ではなく、“香りと記憶”をつなぐ体験です。
香ばしさ、甘味、旨味、余韻。
そのすべてがバランスよく重なり合う瞬間、食卓がまるでレストランのように変わります。
ウイスキーは食後酒だけではありません。
料理とともに味わうことで、その魅力は何倍にも広がります。
ぜひ次の週末、ジョニーウォーカー ブラックルビーを開けて、特別な一皿とともにその世界を体験してみてください。


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