スコッチウイスキーの伝統といえば、大麦麦芽の「モルトウイスキー」。そして、「モルトウイスキーの魅力を引き出すためのグレーンウイスキー」がスコッチの基本概念です。
今回レビューさせていただく「RyeLaw(ライロー)」は、そんなスコッチの基本概念とは逸脱した「スコティッシュ・ライ・ウイスキー」。ライ麦麦芽を半分以上も使用し、魅力を引き出した一本を今回はレビューさせていただこうと思います。
RyeLaw(ライロー)とは?
ライローはスコットランド・ファイフのインチデアニー蒸留所で作られている「シングル・グレーン・スコッチウイスキー」。シングル・グレーン・スコッチ・ウイスキーとは、多彩な穀物から作られる単一蒸留所のウイスキーのことを言います。
スコッチウイスキーには、細かい法定義が存在しますが、その中に「ライウイスキーの定義」はありません。ライローの原料比率はライ麦麦芽53%、大麦麦芽47%。仮にアメリカだったら「ライモルトウイスキー」となりますが、スコットランドでは「グレーンウイスキー」となります。
安井オフィシャルページだと「アメリカならライウイスキー」って書いてあったけど、おそらく正式には「ライモルト」になると思います。
RyeLawの特徴
ライ麦麦芽53%、大麦麦芽47%
前記したようにライローの穀物比率は、ライ麦麦芽53%、大麦麦芽47%。スコットランドでは珍しく、ライ麦麦芽を半分以上使用したウイスキーとなっています。しかも、ライ麦・大麦ともに地元ファイフ地方産が100%。ライ麦の品種は「Magnifico(マグニフィコ)種」という高収量でバイオガス用穀物としても注目されているスコットランド生まれの品種です。
ライ麦のウイスキーがスコットランドに少ないのはライ麦が扱いにくい穀物だからという点があります。ライ麦は大麦に比べて固く、大麦麦芽粉砕用として主流となっているローラーミルでは細かく粉砕することができません。インチデアニー蒸留所では、ハンマーミルと最新鋭のマッシュフィルターを使用することで、ライ麦のように扱いにくい穀物でもウイスキーが作れるようにしているのです。
安井最新型マッシュフィルターはスコットランドにはインチデアニーとティーニニックしか持っていません。
ローモンドヒルスチルによる精密蒸溜
ライローは、インチデアニー独自の「Lomond Hill Still(ローモンドヒルスチル)」で蒸溜されています。これは、銅製ポットスチルのネック内部に6枚の銅製バブルキャッププレートを備えた特殊な蒸溜器。イタリアのフリッリ社がインチデアニーのために独自製造しました。
「ローモンドスチル」というとスキャパやロッホローモンド(過去にはグレンバーギーやミルトンダフも持っていた)が有名。ローモンドスチルはモルト原酒を作り分けるために作られた単式蒸留器ですが、インチデアニーの「ローモンドヒルスチル」は連続式も行える独自のハイブリッドスチルとなっています。この蒸留器だけでアルコール度数90%まで上げることができ、精密にコントロールすることも可能。
この構造により、求める香味成分をより正確に捉え、ライローでは72%ABVというポイントで香味のピークを狙って回収する「精密蒸溜」が行われています。
季節を取り込む屋外発酵
インチデアニーでは、屋外での発酵を行っています。ファイフの季節の変化を活かした発酵プロセスとなっており、季節や穀物の種類によってさまざまな酵母を使い分けることがインチデアニー流。通年通して、異なる酵母を使う蒸留所です。発酵時間は60時間ほどで、スコッチの中では中程度ほどの発酵時間となっています。
蒸溜所紹介|インチデアニー蒸溜所について
インチデアニー蒸溜所は、スコットランド・ファイフ州、キングラッシーとグレンロセスの間、ローモンドヒルズの麓に位置する新興蒸溜所です。公式によると、蒸溜所の建設は2014年に始まり、初蒸溜は2015年12月に行われました。
創業者であるイアン・パーマー氏は、長年スコッチウイスキー業界に携わってきた人物。伝統的なスコッチの枠組みを尊重しながらも、設備面では非常に革新的なアプローチを採用しています。
商品スペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品名 | RyeLaw / ライロー |
| ジャンル | シングル・グレーン・スコッチ・ウイスキー |
| 生産国 | スコットランド |
| 地域 | ファイフ州 |
| 蒸溜所 | InchDairnie Distillery / インチデアニー蒸溜所 |
| 原料 | ライ麦麦芽53%、大麦麦芽47% |
| 蒸溜 | ローモンドヒルスチルによる精密蒸溜 |
| 蒸溜年 | 2017年 |
| ボトリング年 | 2022年 |
| 熟成樽 | 新樽チャードオークカスク |
| アルコール度数 | 46.3% |
| 容量 | 700ml |
テイスティングノート
アロマ
ライチや黄桃、ドライアプリコットの濃密な果実香に、焼き立てのパンドカンパーニュを思わせる穀物の温かみ。バニラや苺、パインの甘やかさに、クローブやシナモンのスパイスが重なり、アロマからすでに多層的。
フレーバー
口当たりは非常にスムースで柔らかいが、直後にスパイスが一気に広がるダイナミックな展開。クローブ、ペッパー、カルダモンといったスパイスが主体となり、樽由来のウッディさが構造を支える。フルーティさとスパイスが交錯し、非常に奥深く複雑な味わい。
フィニッシュ
スパイシーな刺激とともに、アプリコット由来のフルーティな甘さとライ麦ビスケットのようなシリアル感が長く続く。余韻は非常に長く、層を感じながらゆっくりとフェードアウト。
総評
スコットランドが提示する“ライウイスキーの完成形”ともいえる一本です。スパイシーでドライな骨格に、フルーツ、シリアル、樽由来の風味が幾重にも重なります。これほど多層的でありながら、口当たりは驚くほど滑らかです。
完成度・バランスともに突出した、トップクラスの一本といえるでしょう。

■ 飲み方別レビュー
■ 飲み方おすすめ度(★評価)
| 飲み方 | おすすめ度 | コメント |
|---|---|---|
| ストレート | ★★★★★ | 果実、シリアル、樽香、スパイスが多層的に重なる。ライローの完成度と複雑さを最も正面から楽しめる飲み方。 |
| トワイスアップ | ★★★★☆ | 甘みが強く開き、チョコレートやライ麦パン、紅茶、甘いスパイスが広がる。力強さより香味の多彩さを楽しむ飲み方。 |
| ロック | ★★★★☆ | 甘みが引き締まり、ペッパーやカルダモン、ジンジャーの刺激が前面に出る。ドライでビターな印象。 |
| ハイボール | ★★★★★ | 洋ナシやマスカットのような果物感が強く出て、華やかで飲みやすい。ライローのフルーティさを軽快に楽しめる。 |
| 水割り | ★★★★☆ | 青リンゴやジャスミンのような香りが広がり、甘みと華やかさが主体になる。トワイスアップとは違う軽やかな魅力。 |
| お湯割り | ★★★★☆ | バニラ、カラメル、きび砂糖入りの紅茶のような甘さが広がる。クローブやシナモンの甘いスパイス感も心地よい。 |
ストレート

ライローがアルコール度数46%前後のウイスキーなので、ストレートでも度数の強さよりもポテンシャルが十分に楽しめると思います。
フルーティさやシリアル、フローラルさ、ワイン樽のニュアンス、スパイスなど複雑なフレーバーを感じやすいです。ハイボールやロック、トワイスアップとそれぞれに違った印象を感じさせてくれるので、ストレートは最もライローの完成度を正面から楽しめる飲み方といえるかもしれません。
トワイスアップ

トワイスアップにすると、口当たりはよりなめらかになり、ライローの甘みが柔らかく前に出てきやすいです。
チョコレートやライ麦パンを思わせる穀物様の香ばしさに、ダージリンのような奥行きが重なり、そこへクローブ、シナモン、ジンジャー、バニラを思わせる甘くスパイシーなニュアンスが広がります。ストレートと比べると力強さはやや穏やかになりますが、そのぶんフレーバーの幅は広く、多彩な香味を感じやすい飲み方です。
甘みをしっかり楽しみたいなら、トワイスアップは十分おすすめできます。
ロック

ロックにすると、ライローのスパイシーさがより際立つ印象です。
冷却によって甘みはややそぎ落とされ、全体のトーンはドライに変化。ストレートやトワイスアップで感じられた甘やかさよりも、ペッパー、カルダモン、ジンジャーのような刺激的なスパイス感が前面に出てきます。
味わいの印象はビターで引き締まり、少し大人びた表情へと変化します。甘く華やかに楽しむというより、ライ麦らしいスパイス感やドライな輪郭を楽しみたい場合に向いた飲み方です。
ハイボール

ハイボールにすると、梨を思わせるフルーティなアロマが心地よく立ち上がります。
口に含むと、甘い印象の中に洋ナシやマスカットのような爽やかなフレーバーが広がり、ライローの果物感がかなり強く感じられる印象。ペッパー、クローブ、シナモンのようなスパイス感も残りますが、全体としては華やかで軽快です。
余韻も長く、甘い果実香とスパイスがきれいに続きます。特別感のあるウイスキーですが、飲みやすさと個性のバランスがよく、ハイボールにするとぐっと親しみやすい表情を見せてくれます。
水割り

水割りにすると、青リンゴのようなフルーティな香りが強まり、全体の印象がすっきりと整います。
口当たりはドライながら、フレーバーには甘さがあり、トワイスアップのときのような甘みと華やかさが主体。さらにジャスミンを思わせるフローラルな香りが広がり、ライ麦のスパイス感とはまた違った上品な印象を楽しめます。
余韻は甘く、ほのかにスパイシー。ハイボールほど軽快ではなく、トワイスアップほど濃厚でもない、別方向の面白さがある飲み方です。
お湯割り

お湯割りにすると、スパイシーさとともにバニラやカラメルを思わせる甘いアロマが大きく開きます。
樽香は強く感じられるものの、全体のバランスは甘やかで、きび砂糖を入れたダージリンのような印象。クローブやシナモンのニュアンスも、刺激的というより甘いスパイスとして広がり、温度によって柔らかくまとまります。
優しい口当たりの中にほのかなスパイシーさがあり、甘い余韻と味わいが長く続くため、寒い季節やゆっくり飲みたい時間に向いた一杯です。
飲み方別まとめ
ライローは、飲み方によって果実感・甘み・スパイス・樽香の出方が大きく変化するウイスキーです。ストレートでは、ライチ、黄桃、アプリコット、ライ麦ビスケット、クローブ、カルダモンが複雑に重なり、ボトル本来の完成度を最も強く感じられます。
ハイボールでは洋ナシやマスカットのようなフルーティさが前面に出て、飲みやすさと華やかさが際立ちます。ロックでは甘みが引き締まり、ライ麦由来のスパイシーでビターな表情が強調されます。
甘みと香りの広がりを楽しむならトワイスアップやお湯割り、軽やかな華やかさを楽しむなら水割りも好印象です。全体として、ライローはストレートでの完成度が高く、さらにハイボールでも魅力が崩れない、非常に応用力の高い一本といえます。
まとめ
RyeLaw(ライロー)は、インチデアニー蒸溜所の初リリースとして登場した、革新的なシングル・グレーン・スコッチ・ウイスキーです。
ライ麦麦芽53%、大麦麦芽47%という構成に加え、ハンマーミル、マッシュフィルター、屋外発酵、ローモンドヒルスチルによる精密蒸溜、新樽チャードオーク熟成という独自の製法を採用。スコッチウイスキーの伝統を踏まえながらも、ライ麦のスパイシーさと新樽由来の甘やかなオーク感を組み合わせた、現代的な1本に仕上げられています。
特に、ライ麦のペッパー感、バニラ、ビスケット、シリアル、ドライフルーツといった要素は、料理との相性を考えるうえでも非常に魅力的です。価格帯は高めですが、スコッチにおけるライ麦表現の新しい可能性を示すボトルとして、ウイスキー好きなら一度は試しておきたい存在です。


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