スモーキーなウイスキーと聞くと、潮気やヨードを伴うアイラモルトを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
インチデアニー蒸溜所の「キングラッシー ダブル・マチュアード」は、約50ppmのヘビーピーテッドモルトを使用しながら、海を連想させる要素は控えめ。ベーコンや焚き火を思わせる温かな煙に、アモンティリャード樽由来のナッツ、赤ブドウ、スパイスが重なる、複雑で滑らかな一本です。
この記事では、キングラッシー ダブル・マチュアードの製法や特徴、実際に飲んで感じた香味に加え、ストレート、ロック、ハイボールなど、飲み方による変化を詳しくレビューします。
キングラッシー ダブルマチュアードとは?

「キングラッシー ダブル・マチュアード」は、スコットランド・ファイフにあるインチデアニー蒸溜所が手がける8年熟成のシングルモルト・スコッチウイスキーです。
キングラッシーは、インチデアニー蒸溜所が初めて自社ブランドとして発売したシングルモルトシリーズ。
ダブル・マチュアードと、リフィル・アメリカンオーク樽のみで熟成した「キングラッシー ロー」の2種類が、2025年に初めてリリースされました。
キングラッシーの蒸溜が行われるのは、毎年12月の1週間に満たない短い期間だけです。
ファイフ産大麦とスコットランド本土のピートを使い、麦芽段階で約50ppmという高いフェノール値に仕上げています。
しっかりとしたスモーキーさがありながら、アイラモルトに見られるヨードや潮気とは異なるタイプ。
焚き火や燻製料理を思わせる温かな煙を楽しみたい人に向いています。
同時発売された2商品や開発背景については、ニュース記事「インチディアニー蒸溜所、初のシングルモルト『キングラッシー』2種をリリース」でも詳しく紹介しています。
RyeLawの特徴
原料には100%ファイフ産の大麦を使用。アバディーンシャーのセント・ファーガスで採取されたメインランドピートによって、麦芽を約50ppmまでピーテッドしています。
熟成は、リフィルのアメリカンオーク製元バーボン樽で5年間。その後、スペイン・モンティージャ産のアモンティリャード樽へ移し、さらに3年間熟成しています。
アモンティリャード樽は、アーモンドやクルミ、ドライフルーツ、タバコ、スパイスを思わせる香味を与えやすい樽です。バーボン樽由来のバニラや甘みを残しながら、スモーキーな原酒にナッティなコクと複雑さを重ねています。
製造には、穀物を細かく粉砕するハンマーミルやマッシュフィルターを採用。ポットスチルにはそれぞれ2基のコンデンサーが設けられ、銅との接触を増やすことで、力強さと滑らかさを両立させています。公式の製造工程からも、フレーバーを最優先する蒸溜所の思想が伝わります。
参考小売価格は15,000円(税別)と、日常的に購入しやすい価格ではありません。ただし、初のシングルモルト、限定的な蒸溜期間、8年間のダブルマチュアリングという背景を考えると、個性を重視するピートファンには検討する価値のある一本です。
インチデアニー蒸溜所について
インチデアニー蒸溜所は、スコットランド・ローランド地方のファイフに位置する蒸溜所です。ローモンド丘陵の麓、キングラッシーとグレンロセスの間にあります。
運営会社の前身は2011年に設立され、2014年7月に蒸溜所の建設を開始。2015年12月に蒸溜を開始しました。キングラッシーが初めて仕込まれたのは2017年です。蒸溜所公式の沿革によると、季節、大麦品種、酵母、穀物、蒸溜方法を変えながら、複数の原酒を造り分けています。
そのため、インチデアニーを単一のハウススタイルだけで説明するのは難しいでしょう。共通しているのは、伝統的な製法を再現することよりも、設備や原料を科学的に組み合わせて求めるフレーバーを設計する姿勢です。
キングラッシーでは、メインランドピートによる厚みのある煙と、銅との接触を増やしたクリーンな酒質を両立。力強いピーテッドモルトでありながら、飲み口には意外なほどの滑らかさがあります。
蒸溜所紹介|インチデアニー蒸溜所について
商品スペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品名 | キングラッシー ダブル・マチュアード |
| ジャンル | シングルモルト・スコッチウイスキー |
| 生産国 | スコットランド |
| 地域 | ローランド/ファイフ |
| 蒸溜所 | インチデアニー蒸溜所 |
| 原料 | 100%ファイフ産モルト |
| 蒸溜年 | 2017年 |
| ボトリング年 | 2025年 |
| 熟成年数 | 8年 |
| 熟成樽 | リフィル・アメリカンオーク製元バーボン樽で5年、モンティージャ産アモンティリャード樽で3年 |
| フェノール値 | 50ppm以上(麦芽段階) |
| アルコール度数 | 46.3% |
| 容量 | 700ml |
| 参考小売価格 | 15,000円(税別) |
テイスティングノート
アロマ
最初に現れるのは、荒々しく焼いたベーコンや燻製卵を思わせる、パンチの効いた薫香です。煙の存在感は強いものの、ヨードや消毒液のような薬品香は目立ちません。
その奥から、赤ブドウ、ローストアーモンド、クルミ、クローブなど、アモンティリャード樽を連想させる果実香とスパイスが広がります。
バニラの甘い香りもありますが、バーボン樽の甘さより、ナッツや赤系果実、乾いたスパイスのニュアンスがやや優勢。力強い煙の周囲を、複数の樽香が層になって取り囲むようなアロマです。
フレーバー
口当たりはベルベットを思わせるほどマイルドです。しかし、その直後からパンチの効いたスモーキーフレーバーが口の中を走り回ります。
オレンジピール、ビターチョコレート、クローブ、ペッパーを次々と残しながら、煙が味わいの輪郭を作っていくダイナミックな展開。アモンティリャード樽由来と思われるナッティさと乾いたニュアンスが、ピートの力強さに奥行きを与えています。
スモーキーさは明確ですが、薬品香や潮気に偏らないため、癖の強さよりも香味の複雑さが印象に残ります。力強く展開しながら、去り際には暴れることなく、すんなりと収束するバランスのよさも魅力です。
フィニッシュ
一度は落ち着いたスモーキーフレーバーが、余韻を背負って再び戻ってきます。
前半はBBQの網に最後まで残った肉や、燻製したての厚切りベーコンのような荒々しい煙。そこから徐々に角が取れ、ラプサンスーチョンを思わせる上品な燻香へと変化します。
ナッツ、ビターチョコレート、ペッパーの乾いた風味も長く残り、余韻は長め。煙の強さだけで押し切らず、最後に繊細な表情を見せるフィニッシュです。
- 焚火、SMOKY
- オレンジピール、CITRUS
- ビターチョコレート、SWEET
- クローブ・ペッパー、SPICY
- ナッツ、NUTTY
総評
キングラッシー ダブル・マチュアードの最大の魅力は、約50ppmという数値から想像する力強いピートと、実際に口にしたときの滑らかさが共存していることです。塩気やヨード、海藻などの海を思わせる要素はほとんどなく、アイラモルトとは明確に異なるピートの表情があります。
中心にあるのは、焚き火、燻製肉、ベーコンを思わせる温かく香ばしい煙。そこへオレンジ、チョコレート、赤ブドウ、ナッツ、クローブが重なり、アモンティリャード樽の働きをしっかりと感じられます。煙を強めるのではなく、ピートの周囲に複数の味わいを配置したような設計です。
一方、ストレートやロックでは、部分的に青さや若い原酒の輪郭を感じます。8年熟成らしい若さは残りますが、それを欠点として隠すのではなく、ピートの勢いとして生かしている印象です。
価格だけを見れば気軽な一本ではありません。それでも、アイラとは違うピーテッドモルトを探している人や、燻製香とシェリー系樽香の組み合わせが好きな人には、高い満足度が期待できます。最もおすすめしたい飲み方はハイボールとストレートです。

■ 飲み方別レビュー
■ 飲み方おすすめ度(★評価)
| 飲み方 | おすすめ度 |
| ストレート | ★★★★★ |
| トワイスアップ | ★★★★☆ |
| ロック | ★★★★☆ |
| ハイボール | ★★★★★ |
| 水割り | ★★★★☆ |
ストレート

ベーコンや燻製卵、ナッツ、赤ブドウなどの香りを、最もダイレクトに捉えられる飲み方です。
46.3%ながら口当たりは滑らかで、アルコールの刺激が香味を邪魔しません。力強いピートとアモンティリャード樽由来のスパイス、ナッツ、チョコレートがバランスよく広がります。
余韻の伸びもよく、このウイスキーの個性を確認するなら、まずはストレートがおすすめです。ただし、後半にはわずかに青さや若さが顔を出します。
トワイスアップ

加水するとスモーキーさの輪郭がやわらぎ、リンゴや梨を思わせるフルーティな香りが前に出ます。
口当たりはストレート以上にマイルドで、甘みも感じやすくなりますが、ピートの力強さは失われません。余韻はストレートより少し短くなるものの、十分な伸びがあります。
ストレートでは樽香と煙に隠れていた果実味を引き出せる飲み方です。ヘビーピーテッドに慣れていない人にも比較的すすめやすいでしょう。
ロック

冷えることで香りは穏やかになり、ストレートで感じた赤系果実やナッツの要素はやや控えめになります。
口当たりはスムーズですが、その直後からドライなピートが広がり、青い草を思わせるグラッシーなフレーバーも現れます。全体として甘さより乾いた印象が強くなる飲み方です。
氷が溶け始め、口の中で温度が上がるにつれて余韻が徐々に伸びていきます。最初から完成するというより、時間経過による変化を楽しむロックです。
ハイボール

炭酸を加えると、フルーティさとピートの厚みが鮮明になります。甘みを残しながら、焚き火を思わせる香ばしい煙が軽快に立ち上がります。
オレンジやリンゴの果実味、ピート、ドライなスパイスが一体となり、余韻も薄くなりません。スモーキーでありながら重すぎず、食中酒として非常に使いやすいハイボールです。
料理なら、豚肩ロースのグリル、鴨のロースト、ベーコンを使った温製料理、焼きナスなどがおすすめ。肉の脂を炭酸とドライな後味が流し、燻香と焼き目が自然につながります。
水割り

加水によってフルーティさとピートが穏やかにまとまり、甘いニュアンスも感じられます。ただし、全体の印象は甘口に傾かず、最後までドライです。
ストレートやハイボールほどの勢いはありませんが、余韻はおしとやかに伸びていきます。果実由来と思われる酸味が現れ、ナッツや樽香の重さをほどよく引き締めています。
食中酒として合わせるなら、鴨の冷製、ナッツを使ったサラダ、醤油を控えめにした焼き魚などが候補です。
飲み方別まとめ
キングラッシー ダブル・マチュアードの個性を細部まで確認するならストレート、料理と一緒に楽しむならハイボールがおすすめです。
トワイスアップではリンゴや梨のフルーティさが強まり、ピートの刺激もやわらぎます。ロックは香りが閉じやすいものの、時間の経過とともにドライな煙と余韻が伸びていく変化を楽しめます。
水割りは派手さこそありませんが、果実味、酸味、ピートが静かにまとまり、食中酒として扱いやすい飲み方です。
まとめ
キングラッシー ダブル・マチュアードは、ファイフ産大麦とメインランドピートを使用した、インチデアニー蒸溜所初のシングルモルトシリーズです。
麦芽段階で約50ppmというヘビーピーテッド仕様ですが、アイラモルトのようなヨードや潮気は控えめ。ベーコン、燻製肉、焚き火を思わせる温かな煙に、オレンジ、チョコレート、赤ブドウ、ナッツ、スパイスが複雑に重なります。
ストレートでは樽とピートのバランス、ハイボールではフルーティさと香ばしい煙を楽しめます。特にハイボールは肉料理やグリル料理との相性がよく、料理と合わせることで、このウイスキーのドライな後味がより生きてくるでしょう。
アイラとは違うスモーキーウイスキーを探している人に、ぜひ一度試してほしい一本です。



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