スコットランド・ハイランド地方アンガス州に位置するアービッキー蒸留所。
2015年設立の比較的新しい蒸留所でありながら、「畑から瓶へ(ファーム・トゥ・ボトル)」という哲学を貫くサステナブルなクラフト蒸留所として注目されています。
スターリング家による農場経営の延長として誕生したこの蒸留所は、原料の栽培から蒸留・ボトリングに至るまで一貫して自社管理。
ポテトウォッカやジンを皮切りに、2029年以降にリリース予定のシングルモルトウイスキーに向けて、高品質なスピリッツ造りを続けています。
アービッキー蒸留所の基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
所在地 | スコットランド・アンガス州(東ハイランド) |
設立年 | 2015年 |
所有者 | アービッキー・ディスティリング社(スターリング家) |
ツアー | 蒸溜所見学あり(要予約) |
公式サイト | https://www.arbikie.com/ |
SNS | Instagram / Facebook / YouTube / TikTok(@arbikiedistillery) |
アービッキー蒸留所の歴史と背景
スターリング家の農業ルーツ
スターリング家の農業の歴史は1660年にスコットランド西海岸で始まりました。
7世代にわたり土地を受け継ぎ、1920年代に大叔父ビルがアンガス州ルーナン湾に移住して農場を設立。
その後、祖父ジョン、父アレックスへと継承され、農地は拡大されました。
現在の2,100エーカーのアービキー農場は、デイヴィッド、イアン、ジョンの三兄弟が運営しています。
兄弟は幼少期から農場で働き、土地への理解と敬意を育みました。
異なるキャリアを歩んだ後も家族の地との絆を保ち続け、最終的に蒸留所を設立。
こうして「畑から瓶へ」を体現するアービキー蒸留所の基盤が築かれたのです。
蒸留所設立の経緯
2013年、スターリング兄弟はかつての牛小屋を改装し、18ヶ月の歳月をかけてアービッキー蒸留所を完成。
農場の鍛冶屋や機械工の力を借りて、ドイツのCARL社製の銅製スチルを導入しました。
蒸留所としては1794年の地図に記録が残っている古い歴史を持つ土地であり、その復活とも言えます。
2014年にはポテトウォッカ、2015年にはジンとモルトスピリッツの製造を開始しました。
年表
年 | 出来事 |
1660年 | スターリング家、スコットランドで農業開始 |
1920年 | アービキーに移住し農場設立 |
2013年 | 蒸留所建設開始(牛舎改装) |
2014年 | ポテトウォッカ初出荷 |
2015年 | ジンとシングルモルトスピリッツの生産開始 |
製造工程と設備の特徴
項目 | 内容 |
マッシュタン | 0.75トン容量 |
ウォッシュバック | 4基 |
蒸留器 | 2基 {初留4,000L、再留2,400L(CARL社製)} |
発酵時間 | 96時間〜120時間 |
水源 | 地下ラグーンの井戸水 |
年間生産能力 | 20万ℓ |
ウイスキーはポットスチルで2回蒸留、ジンやウォッカは精留塔による三回蒸留を実施しています。
ウイスキーが2029年にリリース予定なので、それまではジンやウォッカを販売するようです。
ただ、ライウイスキーはスモールバッチで限定リリースしています。
副産物は可能な限り牛の飼料として再利用され、エネルギーは太陽光発電を活用。
輸送距離も最小限に抑えるなど、持続可能性を重視した運営がなされています。
シングルモルトウイスキーの展望
アービキーでは、最低14年間熟成した原酒のみを「ウイスキー」としてリリースする方針をとっており、最初のボトリングは2029年〜2030年を予定。
熟成には、元バーボン樽と元シェリーホッグスヘッドを使用し、伝統的なハイランドスタイルに沿いつつ、沿岸の影響を加えた香味が期待されています。
リリース予定のラインナップは14年、18年、21年とされています。

トレーサビリティと環境配慮
原料栽培から蒸留、瓶詰めまで一貫管理することで、驚異的なトレーサビリティを実現。
項目 | 内容 |
原料 | 自家農場で栽培 |
ジュニパー | 自家栽培 |
蜂蜜 | 自家のミツバチが生産 |
エネルギー | 太陽光パネルによる発電 |
廃棄物 | 牛の飼料へ再利用 |

サスティナビリティの高い蒸留所だね!
社会貢献活動
アービキーは、筋萎縮性側索硬化症(MND)と闘う人々を支援する国際的な取り組み「mnd24」に協力。
スターリング兄弟の父アレックスがこの病気で亡くなったことをきっかけに、チャリティや研究支援を通じて治療法の確立に貢献しています。
見学・ツアー体験
アービキー蒸留所では、予約制のガイド付きツアーを開催。農場と蒸留所を見学しながら、サステナブルなスピリッツ造りの裏側を知ることができます。
地元の食材とのペアリングや、限定商品のテイスティングも魅力。詳細は公式サイトでチェックできます。
まとめ
アービキー蒸留所は、土地と農業の歴史を現代のスピリッツ造りに融合させた、スコットランド随一のサステナブル蒸留所です。
2029年のシングルモルトリリースに向けて、今後の展開に注目が集まります。
■公式サイト:https://www.arbikie.com/
■SNS:@arbikiedistillery(Instagram / Facebook / YouTube / TikTok)
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