
飲み比べセットは面白そうだが、実際に店で回るのか分からない。
これは、居酒屋・レストラン問わず、現場でよく聞く声です。
ウイスキー強化を考えた際、必ず候補に挙がる一方で、下記のような懸念が先に立ち、導入を見送るケースも少なくありません。
- オペレーションが重そう
- 原価管理が怖い
- スタッフが説明できるのか不安
本記事では、飲み比べセットを「向いている店・向いていない店」で片付けるのではなく、成立する条件と、失敗しやすいポイントを実務目線で整理します。
理想論や成功談ではなく、現場で運用できるかどうかの判断軸を提供することが目的です。
飲み比べセットは、価値は高いが設計なしでは失敗する

ウイスキーの飲み比べセットは、体験価値が非常に高い施策です。
ニーズも確実に存在します。
ところが、設計をせずに始めると高確率で現場の負担になり、数字も気持ちも削られてしまうことが起きやすいです。
成功の鍵は、銘柄選定ではありません。
「どう提供し、どう説明し、どう回すか」という設計と、それを共有できるスタッフ育成です。
ここを押さえられない場合、飲み比べは武器ではなく重荷になります。
なぜ飲み比べセットはニーズがあるのか

客側の心理構造
ウイスキーに興味はあるが、一本を一杯で選ぶのは不安は大きいです。
それもそのはず。ウイスキーは30mlで1杯1000円以上もするお酒。
そのため客側の選ぶ不安の心理は想像以上に強いものとなります。
価格帯、味の違い、失敗したくない気持ちが重なり、結果として無難なハイボールで終わるケースも多いです。
飲み比べセットは、この不安をまとめて解消します。
- 一杯選べない不安を回避できる
- 知識がなくても「体験した感」を得られる
- その店ならではの切り口を感じられる
つまり飲み比べは、安心して挑戦できる装置。
ウイスキーを「売る」のではなく、「体験として渡す」設計に向いています。
飲み比べセットの現実的なデメリット

オペレーション負荷は確実に増える
飲み比べは、単品提供よりも手数が増えます。
グラスを複数用意し、量を測り、並べ、場合によっては説明が入ります。
ピークタイム帯では、この数分が詰まりの原因となりやすいです。
飲み比べが数卓重なると、ドリンク場が一気に滞留します。
ここを想定せずに導入すると、他の提供スピードにも影響するので、ピークタイム時に提供可能かどうかを想定することは、マストといえるでしょう。
原価・ロス管理の難しさ
少量×複数という構成は、在庫管理を複雑にします。
ボトルの減りが読みにくく、売価設定を誤ると「お得感」だけが残り、利益が出ません。
また、飲み比べ用に仕入れた銘柄が単品で動かない場合、結果的に死蔵在庫になります。
飲み比べは万能ではなく、数字設計が甘いと赤字施策になりやすい点は冷静に見る必要があるでしょう。
現場で無難に成立する設計例

ハーフショット3種が最も現実的
多くの現場で落としどころになりやすいのが、ハーフショット3種構成。
量、価格、満足度のバランスが取りやすく、客側も「飲み比べをした」という体験を持ちやすい設計です。
スタッフ側の説明もシンプルになります。
3種であれば、共通点や違いを短く整理でき、提供時間も読みやすいです。
4種以上に増やすと、途端にオペレーションと説明負荷が跳ね上がるため、慎重な判断が必要。
あくまでもセミナーではなく、気軽な体験を求めているため飲み比べセットは3種類が妥当でしょう。
安井種類が多いと飲み比べるのも疲れちゃいますしね……。
グラス設計は必須条件
飲み比べを成立させるには、同一グラスで揃えることが前提です。
その理由は大きく4つほどあります。
- 見た目の統一感
- グラスの違いによる感じ方の違いをなくす
- グラスの在庫管理の簡素化
- 洗浄オペレーションの統一化
グラスがバラバラだと、洗い分け、戻し先の管理、割れた際の補充など、見えない負荷が積み上がります。
飲み比べは、グラス設計を含めて一つのメニューだと考えた方がいいでしょう。
洗浄負荷は想定以上
見落とされがちですが、洗浄負荷は確実に増えます。
一度に3脚(+チェイサーグラス)も出るため、グラス回転率は下がり、ピーク帯では洗い物が一気に集中します。
安井5個オーダーが入ったら、15脚+チェイサーグラス5個。洗浄機があったとしても、洗う→吹く→しまうの負担は大きいです。
導入前に、「ピーク帯に何セット出たら回らなくなるか」を具体的に想定し、許容ラインを決めておくことが重要です。
また、飲み比べセットを導入するなら、テイスティンググラスとチェイサーグラスは多めに用意しておいた方がいいでしょう。
説明負荷を減らすための工夫

口頭説明に頼らない設計
飲み比べが失敗する大きな理由の一つが、説明の属人化です。
毎回口頭で説明する設計は、忙しい時間帯ほど破綻します。
有効なのが、コースターやカードに銘柄名と簡易説明を記載する方法です。

スタッフは補足に徹し、基本情報はツールに任せます。
これにより、説明時間の短縮と内容のブレ防止が同時に実現します。
売れるかどうかは、銘柄選定よりツール設計で決まると言っても過言ではありません。
スタッフ育成の重要性

飲み比べは属人化しやすい
詳しいスタッフがいる日は回るが、いない日は止まる。この状態は非常に危険です。
説明内容が人によって違えば、体験の質も変わります。
最低限、全スタッフで共有すべきなのは次の三点です。
- なぜウイスキーなのか
- なぜこの店で飲み比べなのか
- このセットで何を体験してほしいのか
知識量ではなく、思想と狙いの共有が前提条件。
ここが曖昧なままでは、飲み比べは長続きしません。
飲み比べセットを考えるときに一緒に考えたいこと
飲み比べ設計を考える際は、以下の視点とも接続します。
いずれも、「商品ありきではなく設計が先」という共通思想で語られるテーマです。
飲み比べは、その延長線上にある施策だと位置づけると整理しやすくなります。
飲み比べセットは“仕掛け”である
ウイスキー飲み比べセットは、単なるメニューではありません。
体験を設計するための仕掛けです。
やる価値は確実にありますが、設計と教育がなければ、現場の負担になります。
導入を検討する際は、「やりたいか」ではなく「回るか」「続くか」で判断してください。
設計が先、飲み比べは後。
この順番を守れるかどうかが、成否を分けます。
事業者の方へ
- 飲み比べセット設計の相談
- メニュー・原価設計の壁打ち
- スタッフ向け説明整理のサポート
現場条件に合わせた設計が必要な場合は、個別に検討する余地があります。


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