実は、ビスコッティ(カントゥッチ)は、私が修行時代に初めて任された料理。
思い入れのあるものなので、何とか今の自分としてウイスキーに合うビスコッティを形にしたいと思いました。
ビスコッティ(カントゥッチ)とは?

ビスコッティは、「2度焼いた」という意味のイタリア菓子で、意味通り大きく焼いたクッキーをカットして再び焼く製法が特徴です。
同じようなお菓子で「カントゥッチ」というお菓子があるのですが、こちらはビスコッティをアレンジしたトスカーナ州の郷土菓子。
ホールのアーモンドが入ることが特徴で、固くバリバリと音が鳴るほどの食感が「歌を歌っているようだ(カンターレ)」から名付けられたといわれています。
コーヒーや紅茶に浸して柔らかく食べることが多いお菓子ですが、トスカーナ特産の甘口ワイン「ヴィン・サント」に浸して食べるのが、現地の伝統だそうです。
ビスコッティはウイスキーに合わない

ビスコッティは、本来かなり硬めに焼き上げるお菓子です。
そのため、コーヒーや紅茶に浸して少しやわらかくして食べることも多く、食感そのものに特徴があります。
ただ、ウイスキーと合わせる場合、この「硬さ」が少し難点です。
ビスコッティを噛むことに意識が向きやすく、ウイスキーの香りや甘み、余韻を感じる前に、口の中で食感の主張が強く出てしまうから。
特にウイスキーは、樽由来のバニラ香、ドライフルーツ、スパイス、スモーキーさなど、繊細なフレーバーの重なりを楽しむお酒です。
硬い食感が前に出すぎると、その細かな香味を拾いにくくなります。
また、コーヒーや紅茶のようにウイスキーへ浸して食べるのも、あまりおすすめしません。
ビスコッティがアルコールを吸うことで、口に入れた瞬間にアルコール感が立ちやすくなります。
結果、ウイスキー本来の香りよりも刺激が目立ってしまうことが起きてしまうのです。
さらに、プレーンなビスコッティは味わいが素朴です。
小麦、卵、砂糖、ナッツのようなシンプルな構成だけでは、ウイスキーの複雑なフレーバーに対して少し要素が足りません。
安井甘口ワインほどの甘味やコーヒーのような苦味があれば合うと思うけど、ウイスキーはアルコールの味が際立ちますね。
そのため、ウイスキーに寄り添うというより、味の接点が少なく、やや物足りない組み合わせになりやすいです。
- 硬い食感が強く、ウイスキーの繊細な香味を感じにくくなる
- ウイスキーに浸すと、アルコール感が強調されやすい
- プレーンなビスコッティでは素朴すぎて、ウイスキーとつながる風味の要素が少ない
ビスコッティ自体が悪いわけではありません。
ウイスキーと合わせるなら……
- 食感を少し軽くする
- 香ばしさや甘みを足す
- ドライフルーツやスパイス、カカオ、柑橘などの要素を加える
など、ウイスキー側のフレーバーに寄せる工夫が必要です。
ハイボールに合わせるなら、レモンと胡椒に着目
そこで今回は、ビスコッティをハイボールに合わせることを前提に、相性のよい要素から考えてみました。
ハイボールと合わせやすい要素としては、例えば次のようなものがあります。
- レモンの爽やかな香り
- 胡椒の軽い辛み
- バターの濃厚さ
- ナッツや焼き菓子の香ばしさ
この中でも、今回は「レモン」と「胡椒」に着目しました。
レモンの柑橘感は、ハイボールの爽快感とつながりやすい要素です。
そこに胡椒のスパイシーさを加えることで、甘さだけに寄りすぎず、食事寄りのおつまみとしても成立しやすくなります。
また、レモンと胡椒の組み合わせであれば、バーボン系のハイボールにも、スコッチ系のハイボールにも比較的合わせやすいと考えました。
レモンが香りの橋渡しをし、胡椒が味わいの輪郭を作ってくれるため、仕立て方次第では幅広いハイボールに対応できそうです。
問題は、やはりビスコッティ特有の硬さです。
通常ビスコッティの硬い食感は、ウイスキーの繊細な香りを感じにくくする要因になります。
ただし、ハイボールの場合はストレートに比べてアルコール度数が下がり、水分量も多くなります。
炭酸による軽さもあるため、硬さがそこまで邪魔にならない可能性があるのではないかと考えました。
試作してわかったこと
今まで僕が作ってきたビスコッティのレシピに「レモン」と「胡椒」の要素を足して実際に作ってみました。
感想としては、方向性は悪くないという印象。
レモンの爽やかな香りと胡椒の軽いスパイシーさは、思っていた通りハイボールとの相性がかなり良いです。
特定の銘柄に寄りすぎることもなく、スコッチ、バーボン、ジャパニーズなど、比較的いろいろなハイボールに合わせやすい印象でした。
特に相性が良かったのは、フルーティなタイプのウイスキーです。
りんご、洋梨、柑橘、はちみつのような香りを持つウイスキーのハイボールとは、レモンの香りが自然につながり、胡椒の刺激が後味を引き締めてくれます。
ただし、問題はやはり食感でした。
味や香りの方向性は合っているのですが、強力粉100%で作るとビスコッティ特有の硬さがかなり前に出ます。
噛みごたえが強すぎて、ハイボールを飲んだときの軽さや爽快感に対して、少し阻害しているような……。
ハイボールは炭酸の軽さや、すっきりした飲み口が魅力なので、おつまみ側の食感が強すぎると口の中でバランスが取りにくくなるようです。
つまり、今回の試作で分かったのは、
レモンと胡椒のフレーバーはハイボールに合う。
でも、強力粉100%の硬い食感はハイボールには少し重い。
ということです。
そこで次は、配合を見直して、もう少し軽く、口どけのよい食感を目指して作ってみることにしました。
完成品
そこで次の試作では、食感を軽くするために配合を見直しました。
具体的には、強力粉100%だった生地の一部を、薄力粉とアーモンドプードルに置き換えました。
強力粉だけで作ると、噛みごたえが強く、ハイボールの軽やかさに対して食感が重くなりすぎます。
そこで薄力粉を加えて生地の力を少し弱め、さらにアーモンドプードルを加えることで、口どけと香ばしさを出す方向に調整しました。
この変更によって、前回感じた食感の問題はかなり改善されました。
ビスコッティらしい噛みごたえは残しつつも、強力粉100%のときほど硬さが前に出ません。
噛んだときの負担が軽くなったことで、ハイボールの爽快感を邪魔しにくくなりました。
さらに今回は、粗めのスモークソルトも加えています。
レモンの爽やかさ、胡椒のスパイシーさに、スモークソルトの塩味と香ばしさが加わることで、より大人向けの味わいを演出。
塩味が入ることで甘さが締まり、ハイボールを飲んだときにも味の輪郭がぼやけません。
結果として、前回よりもかなりウイスキーに寄り添いやすいビスコッティに仕上がりました。
特にハイボールと合わせるなら、ただ甘い焼き菓子にするよりも、柑橘、スパイス、塩味、香ばしさを組み合わせた方が相性はよくなります。
今回のレモン、胡椒、スモークソルトの組み合わせは、ハイボール向けのビスコッティとしてかなり手応えのある仕上がりでした。

- 卵 2 個
- グラニュー糖 160 g
- 蜂蜜 35 g
- 強力粉 150 g
- 薄力粉 60 g
- アーモンドプードル 40 g
- ベーキングパウダー 5 g
- アーモンド 90 g
- レモンピール 40 g
- レモン皮のすりおろし 1 個分
- 塩 2 g
- 黒胡椒 1 g
生地を混ぜる
- ボウルに卵、グラニュー糖、蜂蜜を入れてよく混ぜます。
- 全体がなじんだら、強力粉、薄力粉、アーモンドプードル、ベーキングパウダーを加え、粉気がなくなるまで混ぜます。
- 最後にアーモンド、レモンピール、レモン皮のすりおろし、塩、黒胡椒を加えて、生地全体に均一に混ぜ込みます。
- このとき、練りすぎると食感が重くなりやすいので、粉気がなくなったら混ぜすぎないのがポイントです。
成形して焼く
- 生地を天板にのせ、なまこ型に整えます。
- 厚みを出しすぎると中まで火が入りにくくなるため、あとでカットしやすいように、平たく長めに成形すると扱いやすいです。
- 180℃に予熱したオーブンで、約20分焼きます。
- 表面が軽く色づき、触ったときにある程度固まっていれば一度取り出します。
- 焼き時間はオーブンによって変わるため、状態を見ながら調整してください。
カットする
- 粗熱が取れたら、1.2〜1.5cm幅にカットします。
- 薄く切ると軽い食感になり、厚く切ると噛みごたえが強くなります。
- ハイボールに合わせるなら、個人的には1.2cm前後のやや薄めがおすすめです。
低温で乾燥焼きする
- カットしたビスコッティを天板に並べ、140℃のオーブンで30分以上乾燥焼きします。
- しっかり乾燥させることで、ビスコッティらしい香ばしさと保存性が出ます。
- ただし、乾燥させすぎると硬さが強くなり、ハイボールとの相性が少し悪くなるため、今回はカリッとしつつも、噛み砕きやすい程度を目安にしました。
- 焼き上がったら、網の上でしっかり冷まして完成です。


コメント